この記事は、WiFiルータを作っている製造メーカにフォーカスして、通信制限を深く掘り下げていこうという企画です。今回リサーチするのは、エレコム ELECOMです。
技術力のあるNEC Atermシリーズや、バッファローAirStationシリーズとメッジャーなWiFiルータではなく、ちょっと前までBCN AWARDに常連で顔を連ねていたメーカさんを深堀していきたいと思います。
もしかすると、読者の皆様のなかにも、自宅のWiFiルータはエレコムだよ!って方がいるかも知れません。そうなんです。エレコムは、TP-Linkが日本に進出する前は、国内販売台数2位や3位に顔を連ねていました。売れ行きは苦戦していますが、元々はしっかりした技術を持ったメーカです。
ポテンシャルのある会社
ロジテック Logitec時代のWiFiルータは、アンテナ方向を変えれる製品もありましたが、現在はスタンダードな作りをしたWiFiルータです。というわけで、今回はWiFiルータの製造メーカであるエレコム ELECOMのちょっとマニアな深堀りをしたいと思います。
記事のポイント
- エレコムの歴史と特長を知る
- WiFiルータの搭載機能を分析する
- 製品の特長や機能から弱点をさぐる
- 他社と比較し優れた点を説明する
ELECOMの製品開発の歴史
エレコムのWiFiルータは、他メーカのようにシリーズ名称を付けていないようです。個人的には、パソコンの周辺機器を作っているイメージが強いエレコムですが、まずは、生い立ちについて調べてみました。
ELECOMの生い立ち
エレコム(株)は、1986年に大阪市都島区で誕生した会社で、創業時は、OA家具を製造するメーカでした。1985年頃は、PC-8801、FM-77といった家庭用パソコンが普及し始め、自宅でパソコンを操作するためのパソコンデスクというOA家具が必要になった時期です。

当時、液晶ディスプレイは製品化されておらず、壁掛けテレビは夢物語でした。もちろん、ノートパソコンも存在しません。今のようにスタバでノートパソコンを開いてリモートワークするといったライフスタイルなんて想像すらできませんでした。重たい真空管のCRTモニタと、大型パソコン本体の移動は容易ではありません。これらを置くためのパソコン用の机がどうしても必要だったのです。
エレコムは、OA家具の販売を足掛かりに、マウスやキーボードの製品開発や販売を行い、OAアクセサリー等を作りながらも、無線LANにも手を出します。もちろん、WiFiルータのような精密機器は、スイッチを繋いだだけの、マウスやキーボードとは比べ物にならない高度な技術が必要となります。

高度な精密機器の生産技術を得るために、2004年にパソコン周辺機器メーカのロジテック(株)を子会社化しています。(参考:2024年11月2日 ロジテック株式会社の株式譲渡に関わる基本合意書締結のお知らせ)それから約10年が経過したBCN AWARDでは2014年3位だったロジテックが、2015年にエレコムにブランドを統一しました。ブランド統一の背景には、ロジテックのWiFiルータの脆弱性問題などがあったようです。
エレコムの売上の7割がコンシューマ(一般消費者)向けです。入れ替わりの激しい情報通信機器メーカとして生き残るには、ユーザニーズを常に意識した製品開発を行い、経営統合や事業統廃合で効率化して、事業規模を大きくする必要があります。
機能変更に好感がもてる♥
最近のエレコムの動向をみると、2017年はDXアンテナ(株)、2024年は日本アンテナ(株)の子会社化を行っています。どちらかというと業務用製品を作っている会社です。エレコムのIR情報では、「放送アンテナ関連事業基盤の一層の強化、通信アンテナ事業の拡大、官需向けの公共性の高い事業の継続を実現できると判断し、両社での協議・検討を重ねた結果、本基本合意書締結に至りました。」とあるので、官公庁事業に手を出したい!ということなのかもしれません。
我々、ユーザ側からすると、DXアンテナや日本アンテナという、業務用アンテナを作っているメーカを取り込むので、他社にはない魅力的なアンテナを搭載したWiFiルータを開発販売して欲しいです。一部のマニアで人気だった、ロジテック時代のとがったWiFiルータの再販を期待します。エレコムは、これからが楽しみなWiFiルータのメーカと言えます。
ELECOMの製品開発の強み
エレコムのWiFiルータを自社開発しています。2004年にロジテックを子会社化し、LogitecとELECOMのダブルネームで製品を販売していましたが、2012年にブランド名をELECOMに統一しました。画面構成や機能は、大きく変わっているので、痛みが伴う事業統合を決断したのでしょう。
また、エレコムのキッズタイマーである「こどもネットタイマー」は、こどもネットタイマー3に落ち着くまでの間、何度も試行錯誤を繰り返したようです。

WiFi7に対応したWiFiルータも発売しており、自社開発は続けているようです。もちろん、自社だけで開発するのは大変なので、旧ロジテックと似たような業務形態を持つ(株)アイ・オー・データ機器と2023年にネットワーク機器及びサービス分野において業務提携をしました。今後の動向が楽しみです。(参考:アイ・オー・データとエレコムがネットワーク機器及びサービス分野における業務提携の検討を開始)
若い頃、ロジテックやアイ・オー・データ機器のパソコン周辺機器にお世話になった、のんびり理系おじさんは、エレコムを中心に、往年の技術屋集団が集まり頑張っている姿を見ると、ほっこりすると共に心から応援したくなります。
ELECOMの開発力と技術力
ロジテック時代から培ってきた技術力に裏打ちされた開発力が、エレコムのWiFiルータの強みです。ネットワーク機器を作る高い技術力があります。
一方でWiFiルータの機能は、どんどん削られ、特徴のない製品になってしまった印象です。省電力設定「節電スケジュール」や、パケットフィルタ「IPアドレスフィルタ」といった機能は、エレコムになってから廃止されました。また、こどもネットタイマー無印から3で、MACアドレスフィルタの登録数が50個から20個に減りました。
機能を絞ったことが仇となり、低価格戦略で日本上陸した中華製のTP-Linkにシェアを奪われました。もちろん、モノづくりの丁寧さで考えると、エレコムのWiFiルータの価格は妥当です。

技術力は目に見えないので優劣を説明しづらいですが、一流の精密機器メーカや、アンテナメーカを取り込んだ成果を数値やグラフで示し、技術力の違いをアピールして、昔のように国内販売台数2位、3位に返り咲いて欲しいです。
ELECOM製品の特長
製品の特長は、アピール下手な技術屋さんといった感じです。
例えば、エレコムのWiFiルータの制限機能はルータモードでしか動きません。しかし、機能自体はレイヤ2のアクセスポイントでの機能です。NEC Atermシリーズやバッファロー AirStationでは、アクセスポイントモードでも動作します。
惜しい点
- ゲストSSIDにタイマーがない
- キッズタイマは、ルータ動作のみ
- ゲストSSIDは、ルータ動作のみ
一方で、MACアドレスフィルタを拒否型から許可型に戻したり、キッズタイマーとMACアドレスフィルタが同時利用できるなど、利用者の事を考えて製品開発をしている印象があります。
優れている点
- キッズタイマーとMACアドレスフィルタの同時使用が可能
- MACアドレスフィルタを拒否型から許可型に戻した
目の付け所がすごい!
ELECOMのWiFiルータの制限機能
エレコム(株)は、WiFi黎明期に活躍したロジテック(株)の技術力を引き継いだWiFiルータを供給してきました。ロジテックで培ってきた技術力を元に、キッズタイマー「こどもネットタイマー」もいち早く導入しました。

キッズタイマー「こどもネットタイマー」は、一般的な機能が搭載されています。登録済のMACアドレスを持った端末に制限を掛けるので、未登録の端末は制限されずMACアドレスが定期的に変わるスマホに対応できれない状況も他社と変わりません。
また、ゲストSSID「友だちWi-Fi」は、タイマーがなく2.4GHzのみと残念な状況です。
こどもネットタイマー2までは、DNSルーティングに類似したURLフィルタリングが搭載されていました。こどもネットタイマー3から、機能自体が無くなりましたが、Webブラウザしか制限できないので大きな問題はありません。
MACアドレスフィルタは登録数が20個と少なく物足りないです。自宅で使用する端末数が増えているので、こどもネットタイマー無印時のように登録数を50個に戻して欲しいです。
MACアドレスフィルタ
エレコムのMACアドレスフィルタは「アクセスコントロール」と呼ばれますが、発売時期により動作が異なります。こどもネットタイマー無印時までは、許可型と拒否型のどちらかを選ぶことができました。現在は、拒否型か許可型のいずれかのMACアドレスフィルタになっています。こどもネットタイマー3には、拒否型と許可型の両方があるので注意が必要です。
| 発売時期 | 許可型 | 拒否型 |
| ロジテック時代 | ○:選択 | ○:選択 |
| 無印(~2017年) | 50個:選択 | 50個:選択 |
| 無印(2018年) | - | 20個 |
| 2 | - | 20個 |
| 3(~2021年) | - | 20個 |
| 3(2022頃~) | 20個 | - |
拒否型のMACアドレスフィルタでは意味がないということは、私のブログで何度も説明していますが、それに気が付いて、こどもネットタイマー3搭載の2022年頃から、許可型のMACアドレスフィルタに戻したのは流石だ!と思いました。

なお、キッズタイマー「こどもネットタイマー」と同時にMACアドレスフィルタ「アクセスコントロール」を使えるかは、取扱説明書から判断することができませんでしたが、LINEのエレコムお客様サポートで問合せたら、キッズタイマー「こどもネットタイマー」とMACアドレスフィルタ「アクセスコントロール」の同時利用可能と回答が返ってきました!
バッファローのAirStationシリーズやNEC Atermシリーズは、MACアドレスフィルタとキッズタイマーの同時利用はできないですが、読者の方から、ELECOM WRC-X3000GS3-B は同時使用が可能でした。という情報をいただきました。(感謝です!)
もちろん、許可型のMACアドレスフィルタを動作させた後に、キッズタイマーに処理を渡すことができるので、スマホ等のMACアドレスがランダムに変わっても通信が許可されません。強力なネットワーク利用制限ができると言えます。
ただし、拒否型のMACアドレスフィルタ搭載機ではメリットを生かせません。2018~2021年に発売されたこどもネットタイマー無印と、こどもネットタイマー2、こどもネットタイマー3搭載機の以下のWiFiルータは、拒否型のMACアドレスフィルタです。
| 規格 | 許可型 | 拒否型 | |
| WMC-2LX2-B | Wi-Fi 6 | × | ○ |
| WRC-X3200GST3-B | Wi-Fi 6 | × | ○ |
| WMC-X1800GST2-B | Wi-Fi 6 | × | ○ |
| WRC-X3000GSN | Wi-Fi 6 | × | ○ |
| WRC-G01-W | Wi-Fi 6 | × | ○ |
| WRC-X3000GS | Wi-Fi 6 | × | ○ |
| WRC-X3000GSA | Wi-Fi 6 | × | ○ |
WMC-X1800GST2-Bは、拒否型のMACアドレスフィルタです。Webマニュアルのテキストと画面で書いている内容が相反しているので、どちらが正解かLINでエレコムお客様サポートに問い合わせると拒否型が搭載されていると回答がありました。なお、WMC-2LX2-Bは、WMC-X1800GST2-Bと中継器がセットになったものです。
キッズタイマー
一般的には、幼稚園から小学校低学年の通信制限するのに有効な通信制限が、キッズタイマーです。中高生の制限には向きません。拒否型のMACアドレスフィルタにスケジュール機能を追加したもので、登録したMACアドレスを持つ端末の通信を制限します。登録していないMACアドレスを持つ端末は制限を受けません。

出展:ELECOM WRC-X3000GSN こどもネットタイマー スケジュール詳細画面
最近のスマホのMACアドレスは、プライバシーの保護を目的に、一定の間隔でMACアドレスが変わってしまいます。もちろん、端末が持つ固有のMACアドレスに固定することは可能なのですが、中高生なら、容易にMACアドレスを可変に戻す設定ができるため、スマホの通信制限には使えないと考えておくべきですという所ですが、ELECOMのこどもネットタイマーの場合、アクセスコントロールとの同時使用で接続できる端末を限定できるので中高生にも対応ができます。
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なお、こどもネットタイマーが非搭載のモデルがあるので、キッズタイマーが目当てで購入される場合は、ELECOMのホームページで、機能が搭載されているか確認をしてください。
| こどもネットタイマー非搭載モデル | |
| Wi-Fi 7 (11be draft) | Wi-Fi 6 (11ax) |
| WRC-BE94X-B WRC-BE36QS-B |
WRC-X1500GS-B WRC-X1500GSA-B WRC-X1800GSH-B WRC-X1800GS-B WRC-X1800GSA-B |
ゲストSSID
エレコム のWiFiルータは、ゲストSSID「友だちWi-Fi」が搭載されています。ルータのトップ画面から、ゲストポートをONにするだけで、特定のSSIDが一定時間の通信できるようになります。

使い勝手は良いのですが、タイマーが搭載されていないのと、2.4GHzのみ対応で、5.0GHzは動作しません。例えば、宿題が終わったので3時間だけゲームで遊んで良いとか、google検索に1時間だけネットワークに繋ぐことを許可するとか、そういった使い方はエレコムのWiFiルータはできません。
トップ画面から設定を変更できるの使い勝手の良さはありますが、タイマーが無いので、ネットワーク利用制限としては不十分です。よって、ネットワーク利用制限としては使えないと判断しています。
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パケットフィルタ
ネットワーク屋さんは、通信制限にパケットフィルタ(業務用だとアクセスリストと呼ぶ事が多い)を多用しますが、一般の人は、パケットフィルタを使うことはありません。ロジテック時代にあった「IPアドレスフィルタ」は、エレコムになってから廃止されました。
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DNSルーティング
エレコムのWiFiルータで、こどもネットタイマー無印か2が搭載された機種には、URLフィルタリングという機能があります。URLに特定の文字列が含まれる場合、通信を制限する機能です。
DNS(ドメイン・ネーム・システム)は、IPアドレスとドメイン名を結びつけるものですが、URLは、Webブラウザ等で使用する文字列です。例えば、下記のサーバへの接続を制限したければ、「www.tariwo.net」や「.tariwo.net」を登録します。

ただし、こどもネットタイマー無印時は登録数は5、こどもネットタイマー2で登録数は16と登録できる数が少なく物足りませんでした。制限できるのはWebブラウザからの接続なので、利用される機会も少なく、こどもネットタイマー3時に廃止されました。
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省電力設定
WiFiを使用しない時間帯に電波を止める制限です。電波自体が飛んでいないので、通信制限としては最強です。MACアドレスやIPアドレスによる制限とは異なり、確実に通信制限できます。ロジテック時代には、「節電スケジュール」として搭載されていた機能ですが、エレコムになってから、この機能は無廃止されました。
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ELECOMの通信制限まとめ
エレコムは、ユーザの声を真摯に受け止め、製品開発に生かしているようです。2022年頃に、MACアドレスフィルタを拒否型から許可型に戻したり、キッズタイマーとMACアドレスフィルタの同時使用が可能であるなど、感心する部分がいくつもありました。エレコムのWiFiルータの特徴をまとめます。
ポイント
- 最新WiFi規格に対応した製品を発売する
- アンテナ固定のスタンダードなWiFiルータ
- ネットワーク制限に必要な機能が搭載されている
- 幼児から中高生までの通信制限に対応が可能
- キッズタイマーとMACアドレスフィルタの同時使用が可能
- 機能は多いが、登録数が少ないのが不満
オススメする売れ筋WiFiルータの性能や機能、価格帯は次のとおりです。
| WRC-X6000GSD-G | WRC-BE36QS-B | WRC-X3000GS3-B | |
| 無線の規格 | Wi-Fi 6 (11ax) | Wi-Fi 7 (11be) | Wi-Fi 6 (11ax) |
| 5GHz | 4804 Mbps | 2882 Mbps | 2402 Mbps |
| 2.4GHz | 1147 Mbps | 688 Mbps | 574 Mbps |
| 有線WAN | 1Gbps ×1 | 2.5Gbps ×1 | 1Gbps ×1 |
| 有線LAN | 1Gbps ×4 | 1Gbps ×4 | 1Gbps ×4 |
| アンテナ方式 | 内蔵アンテナ | 内蔵アンテナ | 内蔵アンテナ |
| 5GHz | 送4×受4 | 送2×受2 | 送3×受3 |
| 2.4GHz | 送4×受4 | 送2×受2 | 送2×受2 |
| キッズタイマー | ○:あり | ○:あり | ○:あり |
| MACアドレスフィルタ | ○:許可型 20個 | ○:許可型 20個 | ○:許可型 20個 |
| ゲストSSID | △:タイマー無 | △:タイマー無 | △:タイマー無 |
| 省電力設定 | ×:なし | ×:なし | ×:なし |
| パケットフィルタ | ×:なし | ×:なし | ×:なし |
| 価格帯 | 17,000円 | 14,000円 | 11,000円 |
| おススメ度 |
最後に、読者の皆さまのお子様の成長を心よりお祈り申し上げます。どうしようもないとき、このページを参考に通信制限を掛けてください。今後も、皆様のお役に立てる情報を発信していきます。