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ネットワーク利用制限を掘り下げてみた件(バッファロー AirStation編)

通信制限を掘り下げてみた件(BUFFALO編)WiFiルータを作っている製造メーカにフォーカスして、
通信制限を深く掘り下げていこうという企画です。
第2回目の今回リサーチするのは、バッファロー AirStationです。

安心フィルタを卒業した皆さんの自宅WiFiルータのメーカは何ですか。
第1回で深く掘り下げた、NEC Atermでしょうか。
Atermシリーズは、数々の通信機器を作り出したNECグループが
高い開発力と技術力を結集した正統派WiFiルータでした。

一方でBufalloは、最新のWiFi(IEEE802.11)規格をいち早く取り込み、
方向が変えられるアンテナを搭載する上位機種があるのが特徴
です。
迅速な製品開発と、WiFi(無線LAN)の受信感度アップに特化した
積極的なチャレンジにより、WiFiルータの国内販売台数はトップです。
BCN AWARDでは、22年連続で不動の国内シェアはトップです。

最近は、スタンダードなWSRシリーズと、
アンテナの方向が変えられるWXRシリーズがメインですが、
とにかく、製品開発のスピードがメチャメチャ早く、
最新規格に準拠したWiFiルータを、いち早く発売するイメージがあります。

というわけで、今回はWiFiルータの製造メーカである
Buffaloのちょっとマニアな深堀りをしたいと思います。

 

製品開発の歴史

Buffalo AirStationは、(株)バッファローが販売しています。
元々は(株)メルコという会社で、「Buffalo」はブランド名として
パソコン用の周辺機器を作っていたイメージが強いですが、
メーカの生い立ちについて調べてみました。

 

メーカの生い立ち

(株)バッファローは、元々は(株)メルコという会社で、
音響機器メーカとして、愛知県名古屋市で1975年に創業したようです。
元々は音響機器メーカだったのですね!

そして、パソコンが世の中に普及し始めた1980年半ばに、
パソコン周辺機器に参入し、増設メモリ、CPUアクセラレータ、
LANボード、無線LANルータ、ネットワークストレージ(NAS)など
を開発・製造しています。

これらのことから、AirStationシリーズは、
当初、パソコンを所持しているユーザに使いやすい製品を
開発・製造してきたと思われます。

もちろん、現在は、パソコン周辺機器だけではなく、
WiFi(無線LAN)を始めとするデジタル家電が主力製品であり、
事業内容も、「デジタル家電及びパソコン周辺機器の開発・
製造・販売及びデータ復旧サービス」となっています。

しかし、事業説明は、ネットワーク、ストレージ、メモリの順です。
この内容からすると、デジタル家電というより、今でも、
事業内容はパソコン周辺機器とした方がしっくりくる事業内容です。
それだけに、デジタル家電の供給メーカと認識してもらうため、
WiFi(無線LAN)の開発に注がれる熱量は半端ありません

 

製品開発の強み

AirStationシリーズは、もちろん自社開発です。
最新のWiFi(IEEE802.11)規格を取り入れたWiFiルータを、
どこよりも早く世の中に出すには、自社で開発するしかありません。

WiFi(IEEE802.11)の標準仕様が決定したら、新しいWiFi(IEEE802.11)規格に従って
チップセットを作る会社があるので、そのチップセットを基盤に実装し、
FPGA(Field Programmable Gate Array)の論理回路でCPUとチップセットを
繋ぎ合わせるといった開発を行っています。

今は、FPGAがあるので、基盤の部品実装を変更を加えなくても、
FPGAの内容を変更するだけで済むので、効率よく開発することができます。
大昔は、基盤上の回路を追いかけて、パターンカットして、
ICの上に部品を乗っけて、ジャンパ線で部品を繋いで・・・といった事を
していたのですが、もう、そんなことをすることもありません。

とはいえ、やはり製品開発のスピードが早すぎます。
総務省は、2024年末にWiFi7(IEEE802.11be)規格の内容を固めるつもりですが、
Buffaloは、2024年1月にWiFi7対応ルータを発売しちゃっています。
WiFi7の対応チップセットのサンプル供給が2022年半ば頃にあったとはいえ、
製品開発の速度は「ワイルドスピード」です。

何か問題があれば、ファームウェアのアップデートで書き換えれば
良いとは割り切っているとは思いますが、
ワイルドスピードで最新のWiFi(IEEE802.11)製品を
開発することができるのは、メーカとしての強みですね!

 

開発力と技術力

ワイルドスピードで製品開発できる開発力はBuffaloの強みと言えます。
もちろん、技術力があるから、そんなことができると思いますが、
一方で、信頼性や保守性については、少し気になります。

私の経験談ですが、製品を安定して動作させるためには評価が重要でした。
安定動作させるには、開発に掛かった時間や労力の何倍もの評価が必要です。
もちろん、アジャイル開発(小ブロックに分けた同時開発)をすれば、
開発スピードは速くなります。しかし、全ブロックを繋げた総合試験は、
アジャイル開発とは切り離し、しっかり実施して信頼性を高める必要があります。

また、アンテナの方向を変えることができる製品がありますが、
実際にどこまで検証されたのかは疑問です。無線は目に見えません。
色を付けて電波の届く範囲や、干渉による影響を確認できません。
アプリで電波の想定状況を表現できますが、実際の電波状態ではありません。
無線状態を確認するには、多くの環境で評価するべきでしょう。
やはり、いつの時代も無線通信は難しいです。

カタログやWebには、執拗に「数値は理論上の最大値です」と書いてありますが、
電波の飛び具合を、様々なアンテナ角度で確認したのか気になります。
無線LANの最大送信出力は、電波法で10mWと決まっています。
複数のアンテナを使えば、波を強め合って遠くまで到達することは可能ですが、
逆に、干渉で打ち消し合って、電波が届かない場所も増えます。

電波の重なり合い

そもそも、少し触っただけで、アンテナ角度が変わるので、
保守性や安定性といった部分は、あまり考慮していないのかも知れません。
開発力や技術力は、間違いなく高いですが、
保守性や安定性は、使う人によって意見が分かれると思います

 

製品の特長

最新のWiFi(IEEE802.11)規格への対応がワイルドスピードなため、
あっという間に、新しい製品ラインナップに切り替わります。
新しいWiFi(IEEE802.11)規格の製品を使いたいという人にはオススメですが、
安定した通信環境を求める人に、積極的にbuffaloを勧めることはできません。

製品ラインナップは、WiFi6やWiFi6eといった通信規格と、アンテナ数で
差別化を行っていますが、いち早く市場に製品を投入するため、
WiFiルータの設定画面は、大きな変更はみられません。
おそらく、CPUやチップセットは、同一ラインナップを使っているのでしょう。
そのため、製品によって設定画面の表示速度が異なると思います。
(製品によっては、設定を増やすと動作がもっさりするかも)

また、無線LANの2.4GHz、5.0GHz、6.0GHzといった周波数帯は、
反射や回り込んで入ってくる可能性はありますが、
鉄筋コンクリートの壁や床を通過して伝送することはできません

周波数が高くなれば直進性も強くなるので、鉄筋コンクリート造が多い、
マンションやオフィスでは、上下方向に伝搬することは困難です。

つまり、アンテナ方向が変えれるAirStationは、
電波が通過できる木造住宅での使用がターゲットであると考えられます。
左右方向だけではなく、木造2階や3階といった上下方向に伝送することで、
1台のWiFiルータで自宅全部をカバーするという用途に向いています。
よって、マンションやオフィスでBuffalo AirStationを導入する場合、
十分、事前検討を行った方が良い
でしょう。

とはいえ、ファームウェアのアップデートは頻繁に行われます。
購入前に、使用用途と設置方法を十分に検討した上であれば、
最高の環境を手に入れることができると思います。
利用者や設置場所に条件がありますが、
自宅でAirStationシリーズを選ぶ人が多いのも納得です。

 

制限機能の歴史

(株)バッファローは、WiFi黎明期からAirStationシリーズのWiFiルータを供給してきました。
新たな製品を投入するたびに新しい機能が増えています。
一度、追加した機能は、今のところ、廃止することはないようです。
また、通信制限の機能としてはオーソドックスです。
「この機能は他社にはない!」といった特筆すべき機能はありませんが、
必要な機能は、ひと通り揃っている感じです。

buffalo通信制限の歴史

ゲストSSID「ゲストポート」は、他社に先駆けて導入されました。
中高生は、学校の授業でもタブレットやChromeBookを使います。
クラブ活動や補習授業によって帰宅時間もバラバラなので、
トップ画面から設定や時間延長ができるゲストSSIDは、とても便利です。
BuffaloのAirStationシリーズで通信制限をするなら、
ゲストSSID「ゲストポート」をオススメしたい
と思います。

キッズタイマーは、WiFiルータ製品としては後発です。
NEC Atermシリーズのキッズタイマー「こども安心ネットタイマー」と
同等の機能を搭載した形です。ほぼ、同じ機能を実現しています。

DNSルーティングは、一度も搭載されたことはないようです。
Buffaloにも、法人向けネットワーク機器はありますが、
大手や中堅企業でBuffaloのルータが使われているのを見たことがありません。
それゆえ、ルータ本来の機能に限定すると、私の評価は高くありません。

機能の設定画面ですが、どの製品も同じ場所にあり、
シリーズによって設定画面の構成が大きく変わることはありません。
新しい通信規格に対応した製品を購入しても、
悩むことなく、通信制限の設定ができるのは良いですね!

 

MACアドレスフィルタ

Buffalo AirStationシリーズには、
許可型のMACアドレスフィルタ「MACアクセス制限」が実装され、
拒否型のMACアドレスフィルタが搭載されていないのには好感が持てます。
なぜなら、拒否型のMACアドレスフィルタには、
未登録端末を制限できないという致命的な問題があるからです。
古くから存在したMACアドレスフィルタは、すべて許可型です。

無線設定 > MACアクセス制限で
通信を許可する端末を指定することができます。

また、キッズタイマー使用時は「MACアクセス制限」を使うことができません。
これは、キッズタイマーが拒否型のMACアドレスフィルタに、
スケジュール機能を追加したものであり、許可型と拒否型の
MACアドレスフィルタを同時に動作させる事ができないためです。
この動作は他社でも同じです。

メーカによっては、許可型のMACアドレスフィルタを廃止して、
拒否型のMACアドレスフィルタだけにする動きもあるので、
Buffaloさんには、許可型のMACアドレスフィルタを残してもらいたいです。

 

キッズタイマー

主に幼稚園から小学校低学年の通信制限するのに有効な通信制限が、
キッズタイマーです。中高生の制限には向きません。
拒否型のMACアドレスフィルタにスケジュール機能を追加したもので、
登録したMACアドレスを持つ端末の通信を制限します。

一方で、登録していないMACアドレスを持つ端末は一切の制限を受けません
つまり、登録されていないMACアドレスを持つ端末は、
SSIDとパスワードさえ知っていれば、誰でも自由に接続できます。

最近のスマホのMACアドレスは、プライバシーの保護を目的に、
一定の間隔でMACアドレスが変わってしまいます。
もちろん、端末が持つ固有のMACアドレスに固定することは可能なのですが、
中高生なら、容易にMACアドレスを可変に戻す設定ができるため、
キッズタイマーは、スマホの通信制限には使えないと考えておくべきです。

キッズタイマーのデメリットのタイトル
キッズタイマーのデメリット3選

端末ごとに決められた時間帯にしか接続させない キッズタイマーはとても便利な機能です。 制限をする端末を登録し、 その端末が接続できる時間帯を選ぶだけです。 長時間Wifiに繋いだままにならないので、 ...

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任天堂Switchなどの家庭用ゲーム機は、MACアドレスが変わらないので、
「キッズタイマー」を使った制限は有効です。
言い換えれば、幼稚園から小学校低学年といった世代には有効ですが、
子供が成長するにつれ、使用できる機会が減るのがキッズタイマーです。

 

ゲストSSID

Buffalo AirStationシリーズでの通信制限と言えば、
ゲストSSID「ゲストポート」というイメージが強いです。
ルータのトップ画面から、ゲストポートをONにするだけで、
特定のSSIDの通信が一定時間の通信できるようになります。

ゲストポート

例えば、宿題が終わったので3時間だけゲームで遊んで良いとか、
google検索に1時間だけネットワークに繋ぐことを許可するとか、
要望に合わせて、ネットワーク接続を開放します。

中高生は、学校の授業でもタブレットやChromeBookを使います。
クラブ活動や補習授業によって帰宅時間もバラバラなので、
スケジュールの変更が必要なキッズタイマーは、設定が面倒です。

トップ画面から通信を許可するBuffalo AirStationシリーズの
ゲストSSIDは、とても便利です。時間延長も簡単にできます。

 

パケットフィルタ

ネットワーク屋さんは、通信制限にパケットフィルタ
(業務用だとアクセスリストと呼ぶ事が多い)を多用しますが、
一般の人は、パケットフィルタを使うことはありません。
しかし、パケットフィルタこそが、レイヤ3の通信制限の真髄です。

ルーターセキュリティー > IPフィルターで
IPアドレスを使った通信を制限します。

IPネットワーク上では、Webブラウザもアプリケーションも
すべての通信は、IPアドレスで通信します。
送信元のIPアドレス、もしくは、相手先のIPアドレスを指定すれば、
該当する通信を、完全に遮断することができます。

buffaloパケットフィルタ

もちろん、Webブラウザやアプリケーションを使う上では、
IPアドレスが表面上で出てくることがありません。
しかし、その裏で、すべてのデータ通信ではIPアドレスで通信しています。
それを制限するので、確実に通信を制限することができます。

ただし、コンテンツの種類が増え、データサイズはどんどん大きくなります。
1台のサーバで膨大なデータを処理するのは困難になっているのが現実です。
特に動画配信では、1,000台以上のサーバで分散して処理をしています。
つまり、通信を制限するIPアドレスは範囲で指定しないとキリがありません。

私が調べた範囲では、NEC Atermシリーズ以外のWiFiルータは、
IPアドレスを範囲指定することはできません。
BuffaloのAirStationシリーズは、残念ながらIPアドレスの範囲指定はできません
範囲指定ができれば、最強なのですが残念ですね。

 

DNSルーティング

Buffalo AirStationシリーズは、DNSルーティングを実装していません。
WebブラウザでURLを指定して通信する場合しか制限できないので、
使用する機会が限定されるのが採用されなかった理由だと思います。

また、業務用ルータ開発の技術やノウハウは、
法人向けルータ製品が少ない状況から多いとは思えません。
そういった意味でも、実装されなかったのでしょう。

その代わり、年間3,300円と有料ですがi-フィルターを搭載しています。
閲覧禁止カテゴリに合わせて、WebブラウザのURLを制限できます。
ただし、制限できるのはWebブラウザによる接続だけです。
アプリケーションによる接続は制限できません。

WebブラウザによるURL制限に、年間3,300円を支払う
価値があるかは、みなさんのご判断にお任せします。

 

省電力設定

WiFiを使用しない時間帯に無線を止めてしまう通信制限です。
電波自体が飛んでいないので、通信制限としては最強です。
MACアドレスやIPアドレスによる制限とは異なり、確実に通信制限できます。

省電力設定「スケジュール」は、かなり昔から実装されています。
アプリケーション > スケジュールで、
ランプ、無線LAN、有線LANを1週間単位で設定することができます。

buffaloスケジュール

これは、省電力設定の通信制限が、無線を出す、無線を出さないかという
ISO参照モデルではレイヤ1の物理層での制御であるからです。
「通信制限」といっても制限には、様々なアプローチがあります。
詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

たりを流 これだけは必要なWifiルータ性能
たりを流 これだけは必要なWifiルータ機能

皆さんは、ご自宅で使用しているWifiルータの規格はご存じですか。 ちまたのブログやSNSを見ると、安易に、最新のWifiルータを推奨し、 「Wifiルータはもう家電と同じ扱いだ」とか、 「5年に1回 ...

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なお、普通は、組込CPUのタイマの取り合いになるので、
キッズタイマーと省電力設定のどちらにを選択することが多いのですが、
Buffaloは、なぜか同時に利用することができる
ようです。
この点、よく考えて製品開発されていると思います。

 

まとめ

どうでしたか? AirStationは、色々な通信制限があることが分かりましたね。
また、最新の通信規格に対応しながらも、必要な通信制限の機能が実装され、
多くの人がBuffalo AirStationを選ぶのが良く分かります。

Buffalo AirStationシリーズの特徴をまとめておきます。

ポイント

  • Buffalo AirStationシリーズは、最新規格に対応するWiFiルータ
  • アンテナの方向調整で、より遠くまで通信が可能
  • ゲストSSIDの使い勝手は、Buffalo AirStationが最も優秀
  • 幼児から中高生までの通信制限に対応が可能
  • パケットフィルタが目的ならBuffalo AirStationは勧めない

最後に、読者の皆さまのお子様の成長を心よりお祈り申し上げます。
どうしようもないとき、このページを参考に通信制限を掛けてください。
今後も、皆様のお役に立てる情報を発信していきます。

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たりを

技術士(電気電子部門:情報通信)、労働安全コンサルタント『のんびり理系おじさん』です。情報通信分野で、光伝送装置の開発、システム設計、据付調整など25年以上携わった経験を生かして、通信機器を使って生活を豊かにする情報を発信していきます。今やスマホがない生活は考えられません。自宅のWifiルータを使い倒す方法を中心に紹介します。

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